【シナの変容】 世界宗教マニ教の東進

マニ教について簡単に述べておこう。マニ教(シナ語では摩尼教と記す)は、ササン朝ペルシア帝国統治下のバビロンに生まれた「世界宗教」であった。バビロンは古代文明の首都であった。


またBC330年のアレクサンダー大王の征服によりいわゆるヘレニズム(ギリシア主義)の波がおしよせた。またBC7世紀の「バビロニア捕囚」いらいそこはユダヤ人の根拠地でもあった。これらのことからもうすでにおわかりのようにバビロンは東西文明の交差する十字路にある「世界都市」であったのだ。



そのような世界都市の王族家庭にマニ教の創始者マニは生まれた。216年のことであったという。幼児のころ家族がユダヤ教グノーシス派に改宗した。



グノーシス主義の定義は以下のようである。



1・反宇宙的二元論

2.人間の内部に「神的火花」「本来的自己」が存在するという確信

3.人間に自己の本質を認識させる救済啓示者の存在

もっとわかりやすく言い換えてみよう。まずこの世界、この宇宙は劣悪な創造神が造ったもので、この創造神は善なる至高神と対立的関係にある(1)。人間は創造神の造ったものであるが、その中に、至高神に由来する要素がわずかだけ閉じ込められている(2)。人間はそのことに気付かないでいるが、至高神から使いがやってきて、人間に自分の本質を認識せよと促す(3)。
(『グノーシス・古代キリスト教の<異端思想>』筒井賢治、講談社選書メチエから引用)



ここにはイランのゾロアスター教の二元論、ギリシア的理性、またユダヤ的啓示が混交した考えがみられる。このグノーシス主義がマニ教の根底にあるといってもよい。またこのれゆえマニ教は地中海世界(ローマ帝国領)へと発展したのである。(聖アウグステイヌスもマニ教徒であった。)


マニは24歳のとき(240年)「双子」という精霊(ペルシア語でナルジャミーグ、後に東方ではマイトレーヤすなわち弥勒と翻訳される)の啓示をうけマニ教を創始する。彼は預言者でありしかもみずから経典を表した使徒であり、さらにはみずから伝道もおこなった。


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マニ教の教義も、ゾロアスター教、ユダヤ教(キリスト教グノーシス派)と共通したものがあり、というよりも布教のため各宗教の俗に言う「いいとこどり」をした面があることも否めない。その性格は、東方へ発展したさいシナの仏教・道教を取り入れたことからもわかる。よく言えば柔軟、わるくいえば「鵺(ヌエ)的」である。



その性格が結局は災いして、各宗教から異端として弾圧されることになり消滅への道をたどった。また教義的にも生殖を否定したため当然信者は減少することになった。

一時は西はスペインから東はシナまでにひろがる世界宗教であったが、西では、ローマ帝国がキリスト教を国教と定め、またあらたに勃興したイスラムがササン朝ペルシアを滅ぼし、ともにマニ教を異端として弾圧したため、東のシナへと活路をもとめた。



マニ教と教義の要点をまとめておこう。



1・光の王国と闇の王国の対立。

2.闇の勢力による光の奪取。

3.闇の勢力は光を再奪取されないために光の元素を閉じ込めた物質の肉体をである人間を造った。

4・アダムはグノーシス(智慧)により覚醒し、肉体の連鎖を断ち切るためエヴァとの生殖を拒否するも、あやまって交わりセトが生まれ、人類が始まる。

5.ゆえに人類はグノーシスにより光の元素に覚醒し、その光を月と太陽に帰還させ光の王国へと戻さねばならない。

6.やがて光と闇の王国間の最終戦争(ハルマゲドン)が起こり、光が勝ち物質世界は滅び、光と闇は永遠に分離し再度交わることはない。そして最終的救済がおとずれる。


(『マニ教とゾロアスター教』山本由美子、山川出版から要約)



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残存するマニ経典 断片



いかがであろうか?イラン的、ユダヤ・キリスト教的な世界観が交じり合っていること、さらには、なるほどこれでは異端として弾圧されそうだ、ということがお分かりになることであろう。そしてマニ教がシナで弾圧されて以後、「明教」と改名したことの理由も納得されることと思う。



次回は、シナにおけるマニ教について見てゆきたい。


画像はともに http://www.answers.com/topic/manichaeism より







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